この3cm四方にも満たない小破片は、絞胎陶枕(こうたいとうちん)という小型で中空の直方体の施釉陶器製品です。絞胎陶枕は、白色粘土と褐色系粘土を練り合わせてマーブル模様の粘土の塊を作り、それを板状に切り出して箱状に貼り合わせて作ります。
この破片は、外面に黄色味を帯びた透明釉が掛けられています。一部濃い黄色味を帯びた釉がみられ、部分的に黄釉を掛け流しているのかもしれません。内面は無釉です。また、板状の粘土を貼りあわせた跡がみられ、その様子から、この破片は陶枕の側版および天板の一部とみられます。
陶枕には唐三彩や奈良三彩のものがあり、字を書く時に腕をささえる道具という説もあります。絞胎陶を含む唐三彩は、7世紀中頃から8世紀中頃にかけて盛んに生産されています。唐三彩製品の中でも絞胎陶枕は出土例が少なく貴重なものです。
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