神雄寺跡(馬場南遺跡)で出土した三彩陶器はすべて日本製で、いわゆる奈良三彩とよばれるものです。破片が100点以上出土しましたが、その中に特異な製品がありました。それは、火舎形香炉で、4足の獣脚をもち、その足裏に肉球の表現がされています。猫足などを見ると、本来の肉球は外側に膨らんでいるのですが、この製品では円形の窪みで表現されています。
香炉は香を焚く道具で、仏花瓶とともに宗教的な祭壇を荘厳にするものでした。本来、正位置で使用するものなので、足裏は見えません。そのような場所にも意を尽くしたのは、やきものを作るプロ意識がなせる業なのでしょうか。
なお、色調には鮮やかな部分と濃緑色の部分がありますが、これは、埋没状況の違いによるものです。当初は鮮やかな色調であったのでしょう。 |